西条酒蔵通りの街をつくった『三世代の産業功績者』を刊行
四日市町並研究会 田坂次彦
このたび四日市町並研究会は『西条酒蔵通りの街をつくった三世代の産業功績者』を上梓した。2年間にわたる当会の調査研究の成果である。
この冊子は2年前の平成27年3月に発行した『西条が生んだ教育の先駆者』に続く「西条町発展の礎を築いた人々』をテーマとするシリーズの第2弾として発行したものである。
前回が教育編とすれば今回は産業編である。西条町の産業と言えば言わずと知れた「酒造業」である。この今や西条町いや東広島市の代名詞となった酒造業の生い立ちから現在までの足跡を11人の事績を通して辿ったものである。
そこから酒蔵通りの発展過程、延いては西条町の酒造史を窺い知っていただければという思いを込めて刊行したものである。冊子の構成は、全体を時系列に4章に分け、1章を酒都西条の礎を築いた人、2章を西条を酒都にした人、3章を酒都の復活に賭けた人、4章を酒造業の発展を支えた人、とした。
1章では、第1世代と称して幕末期に生を受け、明治期に活躍した2人の人物を取り上げた。2章では、第2世代と称して明治初期に生を受け、大正期から昭和前期に活躍した2人の人物を取り上げた。3章では、第3世代と称して明治後期に生を受け、昭和の戦後復興期から高度成長期に活躍した2人の人物を取り上げた。4章では、各世代の人物を支えた人物を取り上げた。すなわち、精米機の開発、醸造法の開発・酒質・酒米の改良に貢献した人物、純米酒の開発に賭けた5人の人物である。
これらの人物はこの地に適した方法を用いて酒造業を側面から強力にサポートした。これら11人の人物を四日市町並研究会の12
人のメンバーが各々分担して資料収集、関係者への聴取調査、写真撮影、墓誌・頌徳碑の解読等に当たり、各章・各節を執筆した。編集方針として、①写真、図表を多用して読みやすく、かつ分かり易いものにすること。②墓碑や石碑の刻銘文については写真、原文、現代語訳を付けること。③資料をそのまま引用するのは最小限度にしそれを解析、加工して自分なりのオリジナル原稿にすること。④現地にこまめに足を運んで取材すること。➄史料を多用して内容を質的に濃いものにすること。⑥原稿はご子孫や関係者に目を通していただき了解を取り付けること。を心掛けた。
かくして本文178ページというほぼ計画通りの冊子に仕上がった。なお、この冊子は本会会員の木村浩男氏が酒蔵通りにある自身の所有地に酒都西条の歴史を伝える場として「ヒストリアガーデン(歴史庭園)」を整備されたのにタイアップして刊行したものである。同園内に展示された酒蔵通りの街をつくった人物を紹介するパネルをさらに詳しく補完しようとしたものである。
江戸期に宿場町として栄えた街が明治の新しい世になってさしたる産業もなく停滞していた街に酒造業を興し、さらに日本の三大銘醸地と呼ばれる街にまで発展させた三世代にわたる功績者を顕彰するとともに皆様に紹介したいとの我々の熱き思いが伝われば幸いである。
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